社会作業療法士協会による社会作業療法の定義Ver.0.02
1) 人間には生活上のあるいは人生をおくる上で何らかの障害が必ず存在します。つまり「障がいのない人間も、天からのギフトもない人間も存在しない」ことが社会作業療法の基本理念になります。
2) 社会作業療法は人間を障がいの有無ではなく、お互いを個別性で捉え、考えることが可能な社会の実現に向けて活動します。
3) 社会作業療法では、基本的に、全ての人間に自助の姿勢を求めます。同時に、お互いが助け合う行動~ピアサポートを人類の模範とします。
4) 社会作業療法士は人間の主体性と自助を基盤に、各自が Well- being を獲得するための支援を最大限に行います。
5) つねに最先端の医学的基盤に、科学的な視点と、国、民族、社会と個人間の相互理解を追求し、障がいや差別を意識しないで生きられる人生、社会における役割と生きがいを追求する姿勢を常に支援し、援助します。
6) 作業療法士のうち、病院・施設以外に勤務し、人々の幸福と社会的権利の行使、そして上記事項を遵守しながら社会全体の中で自分の責務を全うしようとする者を、とくに社会作業療法士として定義します。
発起人理事・幹事一同
2024年11月吉日(文責:大嶋 伸雄)(2024.11.10)
日本)社会作業療法士協会
Japan Association for Social Occupational Therapists (JASOT)
設立趣意書 (案)
21世紀と前後して超高齢化社会となった現代の日本ですが、国民の「生命の長さ」がそのまま豊かな老後や人生を謳歌できる生活環境に直結し、多くの方々が持続的な幸せ感(Well-being)を得られるような状況にはなっておりません。残念ながら、むしろ長生きすればするほど、ますますWell-beingから遠ざかるような生活上の様々なギャップや、制度上の機能不全などが目立つ社会となってきました。
さらに世界中で相次ぐ無意味な戦争や紛争、地球温暖化により引き起こされる国内外での大規模災害は、少子化、貧困者数や犯罪数の増加とともに、未来への明るい展望が描きにくい社会になっております。そんな混沌とした社会の中で、いま一番必要とされることは、経済の発展や金銭的な豊かさよりも、高度経済成長時代に失われた、心の豊かさ、安心できる生活環境、働きがい・やり甲斐が持てるライフワーク・バランスといったWell-beingなのではないでしょうか。
一方で、医学の発達により怪我や病気、障害を抱えながら社会で生活する人々も増加する一方です。さらに、認知症高齢者の急激な増加などから、お互いがお互いの多様性を認めあうユニバーサル社会についても急ピッチで、その実現が求められています。
作業療法の専門性の柱である作業(生活行為)を中心とした理論や、過去の実践と知見、多くの技法や手段は、人類が二足歩行を始めてから文明社会を築き上げるまでに、人間が集団で助け合いながら生活する社会を構築できたのは人間の脳(思考)と作業にあることを教えてくれています。これまでの作業療法の実践が示唆してくれた、あるべき人間社会のより良いシステムとして、それらを実現するための作業の効用と効果を広く一般国民へ周知し、作業療法を共有しながら普及させ、誰もが希望の持てる明るい社会に向かって少しずつ進むことを願わずにはいられません。
ここに、すべての人間が自ら進んでWell-beingを獲得することを支援するための組織として、2024年11月に社会作業療法士協会の設立を企図いたしました。
社会に夢と希望を灯すべく誕生した社会作業療法士協会は、誰もが安心して生活できるユニバーサル社会を目指します。その実現のためには、緩やかな相互扶助、ピアサポートの仕組みと、基本的には、可能な限り自助の努力が求められます。ここでいう自助とは、コミュニケーション能力、知的機能、認知機能、精神機能、身体機能、そして高齢による能力低下など、その現実を自ら認めながら、障がいと共に人生を歩んでゆく勇気ある人々の諦めない姿勢を意味します。そうした人々の自助の効果を最も高めて各自の生活に反映させることを社会作業療法士が支援いたします。
貧困、暴力、犯罪、自殺、精神などの問題や課題、人間の生活上におけるすべての課題の多くは、そうした身体や知的、認知的、心理的障がいによる諦め、などから発生します。対象者へ一方的な支援を行うだけではない、リハビリテーションという視点・観点からの支援、教育、環境や自助具のサポートを行う社会作業療法士は、他の多くの専門職との連携や社会的資源を活用する能力を必要とします。医療を提供する病院・診療所、あるいは福祉領域における多種多様な施設間連携から、包括的ケアの実践まで含めた地域の保健・医療・福祉のネットワークの構築、そして整備などにも関与します。
さらに社会作業療法士の活動範囲は国内だけに留まらず、社会作業療法と関係する国際的な組織・学会との情報交換、積極的な交流も促進してまいります。
以上、社会作業療法士という新たな視点・観点から社会貢献を行うことにご興味を抱き、従来の臨床中心の現場から舞台を社会全体に移して、国民全てのWell beingの促進にご賛同いただけるすべての作業療法士の皆さま方へ、本組織へのご入会をお願い致します。皆さまのご参加を、心よりお待ちしております。
※ 本組織は社団法人化を予定しております。
※ 本組織は日本作業療法士協会の外部補完組織を自認しております。会員としてご参加される方は、できるだけ日本作業療法士協会にもご加入下さい。